2002年、グアムの旅
旅程:2002年2月
■旅のはじまり
韓国、シンガポールと2ヶ月連続で海外へ行き、財布も寂しくなってきたので、しばらくバイト中心の平穏な日々を過ごしていた。この時期、自分の生活はバイト先(映画館)中心になっていた。「千と千尋の神隠し」は相変わらず大盛況で、12月に入ると「ハリーポッター」が始まり、これまた大盛況で、忙しい冬であった。
年が明けて2月。バイト先の同僚のシマムー氏が、ふと「南国へ行きたいなぁ」とつぶやいた。話はとんとん進み、グアムに行くことになった。同僚のダーシー氏(和製トム・クルーズ)も巻き込む。ダーシー氏はあわててパスポートを更新し始めた(旅行代理店の人に叱られた)。男3人、南国グアムへの旅の始まりである。
■到着の夜
夕刻に成田空港を発ち、3時間ばかりでグアムへと無事到着。すでに夜も深い。ホテルに落ち着いたのが日付変わって1時であった。ベッドで安眠につき、移動の疲れを癒し、南国でのすがすがしい朝を迎えることができる。
・・・はずが、部屋にヤツが急襲した。Gだ。しかもアメリカンサイズ。慌てふためく日本人たち。「どこだ!どこに隠れた!」「クーラーの裏だ!」「いけ!ダーシー!」「あわわ…あわわ…」「ぎゃあああああ」「いけ!倒せ!」「いないぞ!どこいった!」
阿鼻叫喚の混乱っぷり。結局、Gは行方不明となり、たぶんエアコンの裏に隠れたのだろうと話をまとめたら、今度はエアコンに一番近いベットを誰が使うのかで大いに揉め始めた。なんやかんやで眠ったのは夜明け前の5時であった。
■グアムを歩く
翌朝、起きたら11時を過ぎている。旅の時間をムダにしている気がしないでもないが、旅の目的はマッタリのんびりバケーションだから、別にこれでよいのである。
「Kマート」と呼ばれる大型ショッピングモールへ向かった。ホテルから歩いて30分。散歩がてら町の雰囲気を感じながら、アメリカは人工的な国なのだなぁという印象を持った。まだまだ歴史が浅い若い国なのかもしれない。シンガポールにも似ている気がした。
昼食をとって、ホテルへの帰りはバスでいっかと3人の意見は一致。ところが、ダーシー氏が無料バスカードをホテルに忘れてきてしまったため、止むを得ず徒歩で帰る羽目に。道路を歩きながら、その無料バスに抜かれるたびに、「あれに乗れたはずなのにな」とダーシー氏をいじる。
帰路の途中、何度も雨に打たれては空が明るく晴れ渡った。南国のスコールだ。その景色は美しく感じられた。歩くから見える景色というものもある。それもまたいいのかもしれない。
■
夕方から海へ泳ぎに出た。この常夏の島は、青い海と青い空が限りなく広がり、無限の時間がゆったりと流れているような気がする。
海で泳いだり、浜辺でぐったり寝そべったり、そこらにいるアメリカ人と腕相撲をしては全員が完敗し、贅沢な時間を過ごした。(そのアメリカ人の腕は大木のような太さであった)
夜はバイト先のお姉様方がおススメしていた「OUTBACKS」というステーキハウスで、アメリカナイズなステーキを食べて満足。男3人で夜の海を散歩する。浜辺に座り込んで海を眺めるマムーノ氏はもの思いにふけていた。銀色の夜は過ぎていく。
■スカイダイビング
全4日間の日程だが、初日と最終日は移動日なので、滞在は実質2日と意外に短い。大した目的もないこの旅ではあるが、やってみたいことが1つあった。スカイ・ダイビングだ。JTBのツアーデスクで申し込む。セスナ1台飛ばすので、料金は300ドルほどかかる。マムーノ氏は高所恐怖症を言い訳にし、ダーシー氏は金欠を言い訳にしたので、1人でやることになった。「1時半にホテルの前で集合」とのこと。時間はまだたっぷりあるので、ミクロネシアモールという大型モールへバスで向かう。
お店を回り、ご飯を食べたりしながら、それとなく時間をつぶす。腕時計を見たら1時とちょうどいい時刻。そこでふと自分の腕時計がなぜか日本時間になっていることに気づく。日本時間1時→グアム時間2時。集合時間を30分すぎている。まずい。あわててタクシーに乗り込んだ。ホテルまでのタクシー車内では、陽気な運転手は気さくに多弁を振るまうが、テンパった私は会話どころではなく助手席で無視し続ける。後部席のマムーノ氏とダーシー氏は、そのやりとりに大爆笑していた。
ホテルへ到着。
現地ガイド「サトさーん!困りマス!!」
やっぱり叱られた(そりゃそうだ)。とにかく平謝り。移動の車に乗り込むと、別の参加者である若夫婦はずっと待っていてくれていたようだった。ホントすいません…。幸い、陽気な若夫婦は笑って迎えてくれた。ハイウェイを走り、飛行場へ到着。
「同意契約書」にサインし、日本語の説明ビデオで一連の流れを把握。あとは専用スーツに着替えて、飛行機に乗り込む。一人ひとりに専門のダイバーが背中にくっついて飛んでくれる。「写真&ビデオ撮影」というオプションもせっかくなので付けた。
小型の飛行機が、はるか高く上空まで舞い昇る。不安定でよく揺れる。ドアを開ける。どうやら一番手は自分だ。3、2、1のカウントダウンでGO!だと思っていたら、スリーで飛び出した。パラシュートを開かない「フリーフォール」と呼ばれる時速200キロの落下。眼下に、島全体とその周囲に蒼い海が広がる。とんでもないスピードで落下してるはずなのに、まったく落ちている気がしなくて、本当に空を飛んでるみたいな感覚であった。フライ!フライ!フライ!
20秒ほど経ち、パラシュートを広げると、急落下の反動からか上空に「引き上げられる」感覚を味わい、そこから空中散歩のように、ゆっくりゆっくりと地上を目指して舞い降りていく。これが10分ほど続き、途中から恐怖を感じてくる。足が地に着いてない状態で、空に浮いてる感覚で、なんだか妙に酔ってくる。この空中散歩は、眼下を見るとなかなか怖い。
それでも、アドレナリン全開のスカイダイビングは爽快で、病み付きになってしまいそうであった。いつかまたやってみたい。
■旅のあとがき
グアムの旅は、気の知れた仲間と一緒に海外へ行くという初めての経験であった。韓国やシンガポールは一人旅だったので、それとはまた違い、仲間と行くのも楽しいものだと思った。珍道中で、事件はいくつかあり、失敗もあり、それを寛容に笑って楽しめることも、仲間がいるからこそだろう。大きな目的がなくても、ただ誰かとどこかへいき、面白がる姿勢は大切なことのように思えたりする。そんな南国の旅であった。
【完】