台湾2017

2017年、台湾の旅

旅程:2017年8月12日〜13日

■イントロダクション

35歳の夏。

仕事が、今までにない多忙さで、毎日息が詰まっていた。外へ飛び出したかった。海外に行かなくては。海外に行きたい。そうだ、台湾にいこう、と思った。週末の弾丸旅行、台湾グルメの旅。

家の近所にあるカフェ「楓」。

このカフェでは、いつもスピッツの音楽が流れている。店名もおそらく曲のタイトルが由来だろう。コーヒーを飲みながら、スマホで台湾行きの航空券を探した。全日空、来週の土曜日出発で、往復10万円とある。いままで買ったこともない価格だ。しかし、迷うなら行け、とにかく動け、買ってしまえ。

旅立ちは決まった。

■台湾を食べる

羽田空港から台湾へ。台湾は今回で5回目になる。いつもは桃園空港に着陸するけれど、今回は初めての松山空港だ。日本で例えるなら、桃園が成田空港で、松山が羽田空港。松山は台北市内にあり、交通アクセスがいい。空港からMRT(地下鉄)が出ていて、それに乗れば、すぐに台北中心部に出ることができた。

今回の旅の目的はシンプルで、とにかく食べることである。まずは、コンビニでペットボトルのお茶を買う。私の中で、台湾といえば「茶裏王」だ。この甘いお茶が、台湾に来たことを実感させてくれる。

街中をのんびり歩いていると、早速「自助餐」のお店を見つけた。吸い込まれるように店内へ入る。ビュッフェのように自分でお皿に食べたいものを取り、その分だけ料金を払うシステムだ。台湾では、自助餐のお店が一番手軽で、ハズレが少なく、どの料理を選んでも美味しいという印象がある。要は早くて安くて美味いのだ。ただ時間が午後2時だったせいか、このときは、並べられているおかずの量と種類が少なかったように感じた。でも、この台湾らしさがとても嬉しい。

続いて「胡椒餅」。台湾でいちばん好きな食べものだ。有名店「福州世祖」へ行く。いつも行列ができているイメージだったが、幸運にも並ぶことなく、すぐに買うことができた。胡椒がぐぐっと効いていて、肉汁がぎゅーっとしていて、本当に美味しい。日本にも出店してほしい。

胃袋はまだ満たされてはいない。次は「牛肉麺」。台北駅近くの裏通りにある「劉山東」というお店へ。有名店らしいけれど、来るのは初めてだ。狭い路地裏の店の前には、10人ほどが並んでいた。ラーメンというより、うどんの麺に近い。スープはあっさりしているようでコクがあり味わい深い。肉がてんこもりに乗っていた。幸福な一杯だ。

■淡水の夕暮れ

さすがにお腹も満たされてきたので、食べることを少し休憩し、「台北当代芸術館」という美術館へ向かう。赤レンガの建物は、かつて小学校であったらしい。そこで現代アートに触れる。前にも来たことあったかな、なんて思い出した。記憶はうつろう。

その後、「85℃」という名のカフェで休憩。涼みながら、アイスコーヒーを嗜む。店内はおしゃれで居心地がいい。雑誌BRUTUSの台北特集を読みながら、次はどこへ行こうか考える。

路地裏にある「台湾61Beer」へ向かった。早速、台湾クラフトビールを注文。お店は日本人が経営しているようで、若い台湾人たちで賑わっていた。こじゃれたデザインの店内で、ビールを味わう。

そろそろ今夜の宿にチェックインしておく。booking.comで予約しておいた宿は「Yi Su Hotel」というホテル。 町中に位置していて交通アクセスがいい。価格はリーズナブルで、デザインもオシャレ、ひとりで泊まるにはちょうどいい。次に来たときもここを使いたいと思った。

MRTに乗って、淡水へと向かう。台北中心部から北へ向かって約40分で到着する。ここは淡水河が海へちょうど注ぎ込む河口であり、広くなだらかな川面と、すぐ先に広がる海が見える。リバーサイドは、その景色を眺める人たちが散歩している。夕陽が見えるスポットとしても有名だ。

ついこの場所に引き寄せられてしまう。最後にここに来たのはいつだったかと数えてみる。大学4年生のときだから、もう10年近く前の話だ。あのとき、仲間たちと一緒に歩いたあの夕暮れの淡水の景色。その景観がフラッシュバックする。その記憶の中で自分はまだ学生で、あの頃は何でもできるような気がしていた。そんな感傷に触れながら、あれから変わっていないものと変わっていったものについて、頭の中に浮かべてみる。時間は巻き戻せなくても、この場所は変わらずににあり続けていて、記憶を呼び起こす。何度でも、何度でも。川面の向こうへ陽は沈んでいく。あたりは鮮やかなオレンジ色に包まれていた。

■夜市を歩く

陽は暮れて、台北にも夜が訪れる。まずは、台湾マッサージへ向かう。「活泉」という名前のお店。日本語も通じて、なかなか良いお店だった。台湾旅行の定番になりそう。

台湾の夜といえば、やはり夜市へ。もっとも有名なのは、士林(シーリン)だけれど、今回はあえて行かずに、寧夏夜市に行ってみる。こちらを訪れるのは初めてだ。MRTからの交通アクセスが便利。士林ほど大規模ではないが、むしろ手頃なサイズ感があるので、こっちの方が好きかもしれないなと思った。ここで、食べれるだけ食べる。「鶏肉飯」を初めて食す。「魯肉飯」とはまたひと味違った、サッパリ感があり、これはこれで美味しいな。

「阿婆飯糰」という屋台では、おにぎりみたいなものを売っていた。行列が気になる。これだけ人気ならきっと美味しいだろう。並ぶ価値あり、夜市でいちばん美味しかった。最後に、牡蠣オムレツを食べ、さすがにお腹いっぱい。急に疲れが出てきた。宿へ戻り、夜はふけていく。

■帰国

2日目。朝が覚めると、6時間後にはもう飛行機に乗る必要がある。時間がない。食べれるだけ食べようと早朝から動く。まずは、小籠包を食べに、名物店を回ることにする。MRTで移動。「大安」という駅で下車し、「永和豆漿大王」というお店を訪れる。早朝だけれど、朝食をとる現地の人たちでとても賑わっていた。列に並んで、「小籠包」と「豆乳」を指さして注文。普段、豆乳は好んで飲まないけれど、台湾の朝食の定番らしく、試してみる。朝から小籠包なんて幸せだ。まだまだ食べれる。

近くに中正紀念堂があり、そこを訪れる。広大な広場の中に立つ建物。長い階段を上り、中に入ると、そこには蒋介石の像がある。像はその視線の先に、中国大陸を見つめているのだ。

2回めの朝食は、「鼎元豆漿」というお店へ。ここも現地の人たちや観光客が大勢おり、賑わっていた。また小籠包と豆乳を注文して食べる。

飛行機の時間を考えると、11時くらいには空港へ向かう必要がある。あまり時間もない。最後の最後はやはり、胡椒餅を食べ納めしなくては!と、昨日訪れた「福州世祖」へもう一度行く。台湾で一番好きなのは、この胡椒餅かもしれないな。

MRTから松山空港へ。フライトは13:30の便。滞在24時間もなかったけれど、こんな形で気軽にフラッと外国に触れる時間もいいと思った。台湾が近くにあってよかった。また来よう。台湾の旅、これで終わる。

【完】